この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
資料室の恋人
第2章 C棟とエッフェル塔
中庭から通じる裏口は鍵はかかっておらず、容易に中に入ることが出来た。日和は自転車を適当に停めると、C棟へと入った。
資料室は最上階の12階だが、この時間ではもうエレベーターは動いていないので階段で上がるしかない。
「はぁ、はぁ…」
11階と12階の踊り場まで来ると、資料室の明かりが見える。
息を整えながら、中を覗くと、見慣れた講師が棚から本を出しているところだった。
何故か急に胸が苦しくなる。
扉を開けると、佐倉が音に驚いて顔を上げた。
「あれ…三木さん?今日は来ないと思ってたのに…どうしたの?」
佐倉がきょとんとしている。
驚くのも無理はない。
「い、いえ…通りかかったら電気ついてたので…」
日和がそう言うと、佐倉はくすくすと笑った。
「な、なんですか」
「それでわざわざ来てくれたんだ?」
「いえ、別に、」
「息上がってるね…走って来てくれたの?」
佐倉が微笑みながら日和に近づく。
全部分かっているかのように見つめられて、日和は思わず目を逸らした。