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資料室の恋人
第2章 C棟とエッフェル塔
「あの、外が暑くて…走ったわけじゃなくて、エレベーターが…」
「うんうん、それで?」
日和は恥ずかしさを隠すように、いろいろ言うが自分でも何を言っているのか分からない。しどろもどろだ。
来なければよかった…と心の中で呟いた。
佐倉はからかって楽しんでいる。
「今日来れなかったこと、俺に悪いと思ったの?」
「別に、そうじゃないですけど…」
目の前に立った佐倉が、日和の顔を覗きこむ。
「そうなの?」
佐倉の顔が近づいて、恥ずかしさに思わず俯いた。するとテーブルに置かれた本に目が止まる。
それは、先週の金曜日に日和が読んでいた本だった。
「その本…」
「ああ、この間三木さんが読んでたから。まだ途中だったよね?」
日和は自分のために佐倉が準備してくれていたんだと気付き、胸がきゅっと苦しくなるのを感じた。
なんと言ったらいいのか困った日和は、ただ目の前の佐倉を見つめることしかできなかった。
すると、そんな日和見て佐倉が笑いだす。