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資料室の恋人
第1章 いつもの場所


初めて資料室に行ったとき、鍵を借りなければ中には入れないことは知っていたが、何故か開いていた。
それから毎週金曜日に講義が終わると資料室に通うようになったのだった。
静かさと少し湿った冷たい空気が気に入ったし、誰にも邪魔されないで好きな本が読めるのが嬉しかった。

その日、何気なく手に取った心理学の論文集を読んでいると、急に後ろから声がする。

「心理学に興味あるの?」

振り向くと、今年赴任したばかりの佐倉が、覗き込むように日和の手のなかの論文集を見ていた。

これが日和が佐倉と初めて交わした言葉だった。


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