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資料室の恋人
第4章 オレンジ色の部屋
今月最後の金曜日。
日和はいつものように資料室へ向かった。
今日も佐倉は来ていない。佐倉が資料室に来なくなって3週間が経っていた。
キャンパス内で見かけることもなかった。そもそも日和が主に講義を受けるのはA塔で、佐倉のいる研究室があるのはB塔なので、機会自体あまり無い。食堂や購買などで見かけてもいいものだが、それもなかった。
日和はふぅと息を吐いてエレベーターの下降ボタンを押した。
エレベーターを待ちながら、ぼんやりと各階のランプが光るのを見ていると、携帯電話が着信を知らせる。
一瞬、航平が頭をよぎったが相手は明里だった。
「…もしもし?どうしたの?」
『日和これから暇〜?』
元気のいい明里の声がする。
その声の後ろではがやがやとした音が聞こえるので、どこかの居酒屋にでも居るのだろうということはすぐに分かった。
『これから直也と合流するんだけど、日和も来ない?』
どうせ暇だし行こうかと思い答えようとすると、明里が、あ!っと大きな声を出した。
『日和、金曜日は図書館に行く日だったね!ごめんごめん!』
「…あ、ううん、今日は…」
言いかけた時、エレベーターの扉が開いた。