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資料室の恋人
第4章 オレンジ色の部屋
エレベーターには佐倉が乗っていた。
「せ…っ!」
先生と言いかけたところで、電話していることを思い出して言い止まると、電話口の向こうから、え?と明里の声が聞こえた。
「う、ううん…何でもない」
明里が何か言っている。
耳には入って来なかった。
日和は驚いて佐倉を見ることしか出来ずに、何故か後退りする。佐倉はエレベーターを降りると、人差し指を立てて、静かにという仕草をして笑った。
『どうしたの?日和ー?』
「え、あ!ごめん、また今度誘って!」
じゃあまたねと言って電話を切る。
それを見ていた佐倉がくすりと笑った。
「久しぶりだね、三木さん」
佐倉の声がしんとした廊下に響いた。
優しい声にどこか懐かしさを感じる日和。
「ずっと来れなくてごめんね。金曜日に会議が入っちゃって。三木さんに伝えようと思ったんだけど、キャンパスで会わないし、連絡先知らなかったからさ」
佐倉はそう言いながら、年季の入った鍵を取り出すと資料室の扉を開けた。