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資料室の恋人
第4章 オレンジ色の部屋
佐倉の後に続いて資料室に入ると、濃密な本の匂いに包まれる。 久しぶりの感覚に胸が高鳴るのを感じた。
「三木さん、毎週待ってたりした?」
「別に待ってないです」
「ふーん…」
見透かされているように感じたが、いつものように佐倉のペースに流されないようにそっけなく答えて、さっさと本棚へと向かうと本を選ぶ。
「今日は何を読むの?」
「この前の続きを読もうかと」
3週間も前に読んだ本だ。題名も忘れたし、どんな内容だったかも忘れている。日和が記憶を辿りながら目当ての本を探していると、佐倉が、探してるのこれじゃない?と言って本を指し出した。
「あ…それです」
日和が本を受け取ると、佐倉が微笑む。
久しぶりに見る佐倉の笑顔。優しく笑う顔を見て、自分はこんなにも佐倉に会いたかったのだと自覚する。日和は心が温かくなるのと同時に、何故かイライラしていた。
「…私、ここに来るの辞めます」
久しぶりに会えて嬉しかったはずなのに、口から出た言葉は気持ちとは裏腹に温度が無かった。