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資料室の恋人
第4章 オレンジ色の部屋
「先生なら上手くいくんじゃないですか?」
佐倉だったら心理学を駆使してすぐに彼女にでもできそうなのにと思う日和。そんなもの使わなくてもモテるだろうし。
「三木さんこそ」
「いえ、私は無理です…というか、最初から諦めているので。自分の気持ちが無くなって忘れられるまで、じっと待ってるって感じです」
目の前にいる、好きな人に向かって。
精一杯の笑顔で答える日和。
いつの間にこんなに好きになったんだろう。
最初から諦めている。なのに、こうして資料室に来てしまうのは、先生の特別な存在になったように錯覚できるからだ。私だけって。数時間でも独り占めできるからだ。なんて惨めなんだろう。こんな嫌な自分、見たくなかったのに。
つんと鼻が痛くなって、じんわりと目の前がぼやけ出す。
「…別の本、探して来ます」
日和は涙を見られないように、顔を伏せる。読んでいた本を持って席を立とうとすると、佐倉が日和の腕を掴んだ。