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資料室の恋人
第5章 1年前

3冊目の論文を読み終えた時、資料室の扉が開く音がした。

警備員かと思い時計を見るが、まだ遅い時間では無い。座ったまま体を傾けて本棚の隙間から見ると、小柄な女子学生が入って来た。あれ?開いてる…などとひとり言を言っている。本棚が死角になって女子学生からこちらは見えないようだ。
彼女は何冊か選ぶと、前方の席に座って本を読み始めた。

声をかけるタイミングを失った佐倉は、しばらく女子学生を観察していた。
こちらの存在に気付いたらどんな反応をするのだろう。

佐倉からは女子学生の本を読む横顔が見える。何年生だろうか。自分がもつ講義にはいない学生だ。

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