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資料室の恋人
第1章 いつもの場所
「心理学に興味あるの?」
「…はい、面白そうだなって、なんとなく」
「心理学の講義受ければいいのに」
「あれは1年生で受講ですよね、時間割が合わなくて」
もちろん1年生の講義を受けることは可能だが、他の講義と被っていて受講することができなかったのだ。
「そっかー」
残念、と言わんばかりの表情を浮かべていた新任講師を見て、何故か申し訳無い気持ちになった。
「でも、この論文集面白いです」
「どの論文が面白かった?」
日和を横目に見ながらが尋ねてくる。
「え、あ、えーと…、この音楽と心理学を絡めて書いてるやつです」
日和はパラパラと薄い紙のページをめくると、「音楽が人に与える心理学的作用」という見出しを指差した。
「静かな曲は心を落ち着かせるとか、アップテンポな曲は高揚させるとか…当たり前みたいな事だけど、心理的な理由とか書かれていて面白かったです。なんかカラオケ行きたくなっちゃいます」
日和はへらっと笑った。
難しい用語やグラフなどが出てきてはいたが、日和にも充分理解できる内容だった。