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資料室の恋人
第6章 雨の流れ星
帰りがけ、佐倉は資料室の鍵をかけながら日和に確認をした。
「忘れ物ない?」
「大丈夫です」
時刻は20時を回っている。今日はお互い集中し過ぎてしまって、気付くとこんな時間になっていた。
もちろん、集中し過ぎたというのは読書のことだ。
日和は頭の中で付け足した。
「じゃあ、警備室に鍵返してくるね。先に行ってて」
エレベーターが1階に着く頃、佐倉が言った。
日和は頷いて先にエレベーターから降りると、正門へ向かう。
相変わらず雨は降り続けていた。外では雨がアスファルトの地面を跳ねている。この中を帰るのかと憂鬱になる日和。雨だと自転車にも乗れないので、歩きで家まで帰らなければならない。靴が濡れるなぁ…と更に日和の気分は沈んだ。
「おまたせ」
「鍵、ありがとうございます」
「どういたしまして。全然止まないね、雨」
日和の隣で佐倉が外を眺めながら言う。
「三木さんて雨嫌いなの?」
「どちらかと言うと嫌いですね…」
「うん。すごく嫌そうな顔してた」
そんな顔してたのかと、気恥ずかしくなる。