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資料室の恋人
第7章 味噌汁と卵焼きと金平とパスタと、君
レディースのフロアまで降りてくると、日和が何かを思い出したように、あっ、と言った。
「あの…個人的な買い物があるのでちょっと行ってきます」
「一緒に行くよ」
「あっ、いえ、すぐなので待っててください」
エスカレーターを降りると、日和は逃げるように行ってしまった。
何を買うのだろうと思いながら、佐倉はフロアの窓際に置かれた休憩用の椅子に座ると外を眺めた。ここ数日続いていた雨が嘘のように晴れている。そういえば、午後はまた雨の予報だった。ふと時計を見ると針はそろそろ12時を指すところだ。昼はどうしようか、今日はさすがに日和を自宅へ送らなければ…いや、今日も泊めてしまおうか…などとぼんやり考えていると、目の前を通り過ぎた2人組の女性が佐倉を見ると立ち止まる。何やらこそこそと小声で話しをしているようだ。何気なく顔を上げると、女性たちは揃って声をあげた。
「あーっ!やっぱり!佐倉先生〜!」
「ほんとだーぁ!先生だぁ!」
きゃあきゃあと騒ぐ2人は佐倉の講義を受けている学生だった。確か1年生だったような。
「わー先生の私服初めて見たぁ!」
「先生おしゃれ〜!」
女子学生たちは興奮気味に目を輝かせながら、高めの声で話している。