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資料室の恋人
第7章 味噌汁と卵焼きと金平とパスタと、君
「先生どうしてここに居るんですかぁ?」
「買い物だよ」
「え〜ひとりで来てるんですか?」
「ううん」
「じゃあ、お友達と??」
どうしたものか。
時々、顔を見合わせて恥ずかしそうに笑いながら話す女子学生たち。適当に答えて離れようかと思った時、フロアの角を曲がってこちらへ歩いてくる日和の姿が見えた。
「ごめん、連れが来たから。じゃあね」
佐倉はすっと立ち上がって女子学生たちから離れると、日和の方へと歩く。
「すみません、お待たせして」
「ううん、それより後ろにうちの大学の学生がいる」
「えっ…!」
「そのまま背中向けて」
女子学生たちからは佐倉の陰になって日和の顔は見えていないはずだ。日和は佐倉の陰に隠れたまま、言われた通りに背を向ける。
「よし、じゃあ行こっか」
佐倉は笑顔でそう言うと、日和の手を握った。
「えっ、えっ、あの…!」
「大丈夫。日和が誰だかは分からないから」
「でもっ…」
「見せ付けさせて」
「えっ?」
どう言う意味ですか?と聞きたげな日和に笑顔を向ける。少し離れた後ろの方で女子学生たちのきゃあきゃあという黄色い声が聞こえてくる。佐倉は少しの優越感を感じながら、日和の手を引いてエスカレーターに乗った。
「そうだ、何買ったの?」
「たいしたものじゃないです…」
少し頬を赤らめた日和は、繋いだ手を優しく握り返してくる。佐倉はふーんと言って微笑んだ。