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オレンジ色のまま脳みそに焼きつけて、焦がして
第1章 無邪気なオレンジ
「あの、お客さんちょっといいかしら?」
注文した厚焼き卵と芋焼酎を待っていた私に、店員が申し訳無さそうな顔で声をかけてきた。
この店員、見た目はゴリゴリの男なのに口調が女らしい。
身長も高く、浅黒くて筋肉質な店員は両手を合わせて頭を下げた。
「お店満席になっちゃってね、今相席可能なお客さんには相席を頼んでんだけど‥‥お客さん相席大丈夫かしら?お得意様がちょうど来ちゃってねぇ。あたし的には早く座らせてやりたくてぇ。お願い出来たりするかしら?」
『お願いよ~』と、友達に頼み事をする様な口調で店員は私に相席をして欲しいと言ってきた。
知らない人と顔を合わせて飲む席ほど居心地が悪い事はない。
しかも私は今日ヤケ酒をしにきたんだ。
一人でゆっくり気持を沈めて悲しみに浸りたいのに、他人の顔を見たら集中できない。
私は目の前にいる奇妙な店員に『ごめんなさい』と断ろうと口を『ご』の形に窄めた時、目を惹く程眩しいオレンジ色が現れた。
店内の暗めな照明に照らされた、綺麗なオレンジ色。
「すーちゃん、俺お腹空いたよ〜」
その綺麗なオレンジ色は口紅を塗っているように赤い唇を尖らせ、奇妙な店員の肩に顎を乗せた。
色が白くて顔の小さい、綺麗な顔をした男。
何よりもオレンジ色の髪が印象的で目を逸らせなかった。