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オレンジ色のまま脳みそに焼きつけて、焦がして
第1章 無邪気なオレンジ
「あの、お得意様はこの坊やだからありがたいんだけど‥‥‥」
「あら、この坊やがお得意様だったんですか。ならちょうどいいですね」
「いや、お客さんはいいの?」
「何がです?」
「だってこの子、お客さんに失礼なことしたから」
オカマの店員はチラッとオレンジ色の男を見て、気まずそうに顔を歪ませた。
私は穏やかに笑いながら『30にもなってキス位で騒ぎませんよ』とオカマの店員に言った。
その言葉にオレンジ色の男は食い付いてきた。
「お姉さん30なの!?三十路!?全然見えないね!」
デリカシーがないのか、オツムが足りないのか、またはぶっ飛んでいるのか。
かなりの大声で年齢を大公開された。
顔は綺麗なんだけど、オツムが残念だなこの子。
私は苦笑いしながら、『君はいくつなの?』とオレンジ色の男に年齢を聞いた。
オレンジ色の男は元気よく『二十歳!』と答えて、何がそんなに楽しいのかニコニコニコニコしていた。
二十歳‥‥‥私より10も若い。
オカマの店員は小声で『それじゃ、失礼します』と言ってホールへ消えていった。
「お姉さん名前は?」
レザージャケットのポケットからタバコを取り出し口に咥えながら、二十歳の坊やが私に名前を聞いてきた。
私もタバコを一本手に取り口に咥えながら答えた。
「沙世」
シュボッと、ジッポが火を出す音がしたと同時にオイルの臭いが鼻をかすめる。
坊やは一口吸うと顔を横に向け煙を吐いた。
白い煙が薄い雲のように広がり、薄暗い照明に溶けていく。
「いい名前ですね」
私の名前を褒めてくれた坊やはまた可愛らしく目を細めて笑い、ジッポの火を私の咥える煙草の先端に当てて焦がした。
軽く一口吸い、煙を吐くと同時に『どうも』とお礼を坊やに言った。