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SOS
第2章 虚空と現実
そのあまりのまぬけ面に、木崎は笑いをこらえるので精一杯だった。
「先生……俺の肝臓どうですか? やっぱり、悪化してます?」
医師はずり落ちかけた眼鏡を押し上げる。そして慌てた口調で説明した。
「な、何がどうなったのか分かりませんが……癌細胞が、なくなって……います」
「ふーん。じゃあ俺は治ったってこと?」
「そう考えるのが、妥当かと……」
ゴニョゴニョと、医師の声が小さくなる。
「誤診だな」
「っ、誤診ではないです! 前回の検査では確かに────」
必死に取り繕う医師を、木崎は嘲笑った。
「……今の日本の医療は発達してるってよく聞くけど」
木崎は立ち上がると診察室のドアへと歩き出し、最後に吐き捨てるようにこう告げた。
「医者は雑魚ばっかりなんだな」