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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
目の前の和也のような男性と結婚していたのなら、少なからず今味わっている地獄はなかったように思えた。
実際の私は、こんな贅沢な時間が久し振りと思えてしまうほど、お金に困る生活を強いられていた。
大恋愛の末に結婚した夫は、お金にだらしがなかった。
好きなものは我慢もせずにクレジットカード払いにし、支払いを後回しにした。
自信家で口八丁な性格が災いし、人間関係が上手く築けずに仕事も長続きせず、転職を繰り返す。
その間に返済出来なかった借金はどんどん膨れあがっていった。
とうとう家にまでカード会社がしつこく連絡してくる事態になり、夫は私に真実を打ち明けたのだ。
この事に気づけなかった私にも落ち度はある。
今更だけど、結婚前に気づくべきだった。
恋に恋している最中には、この人とならどんな困難にも負けないと思ってしまう。
元々結婚願望の強かった私は、今度こそと思った恋だった。
早く幸せになりたいという焦りと浅はかな考えが招いた結果でもあった。
お金がなくても、セックスをすれば子供が出来る。
愛という言葉を簡単に交わしながら、その重さすらも知ろうともせず、ただただ恋に酔いしれた愚かな女の理想化された結婚生活が崩れ落ち、逆境という名の巨大な壁が目の前にそびえ立った。
巨大な壁は目の前の道を塞ぎ、不安と恐怖を煽った。
毎月の生活を脅かす借金。
乳飲み子を抱えながら返済していく惨めな生活。
この時、夫への愛は幻だったのだとようやく気づいたのだ。