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炎の薔薇
第10章 炎
何も言わずに電話を切ると、再び和也から電話が掛かってきた。
コールがしつこいほど鳴り響いた。
意を決して電話に出た。
「もしもし……茜?
電話が突然切れてしもうたから………」
「私が切ったんですが、何か?」
「あっ、あ、そうやったのか。すまん。
本当にすみませんでした」
それだけ言うと電話が切れた。
ツゥーツゥーツゥーツゥーツゥー……………
私は電話をそのまま耳に当てたまま、暫く呆然と立ち竦んでいた。
余りにも突然過ぎて涙も出なかった。
その代わり、私の心を支配していたのは怒りだった。
逆ギレと言われてしまえば身も蓋もないが……
不倫の結末なんて、別れが見えた未来を共に歩んでいく事なのだと改めて実感出来た。
そんな事は分かり切っていたはずなのに、奇跡を信じたかった。
ねぇ、和也
別れを切り出されて本気で怒りをぶつける女はね、あなたを本当に愛していた証拠なんだよ。
探偵使ってあなたを鎖で繋ぐ女房よりね、数倍マシな感情を持っているって事!
私はあんたを憐れむよ。
そんな女房の元に戻っていくあんたをね!
バカと天才は紙一重って、本当の事かもしれないわね!
バカ、バカ、バカヤロー!!
やっぱり、シンデレラにはなれなかったのね……