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炎の薔薇
第10章 炎
タバコを一本、二本と吸っていく。
煙が流れる方向を視線が追う。
和也の前では決して吸う事のなかったタバコ。
和也が禁煙者だった事もあるが、吸わない人の前ではなるべく吸わずに気を遣っていたのだ。
なのに今は吸わずにいられない。
むしゃくしゃする気持ちを少しでも和らげたい。
あんなに愛し合ってお互いを必要としていたのに、一方的にもう二度と会わないと残酷な言葉を言われたのだ。
和也の言葉が頭の中をリフレインした。
決定的な結論は、私達は終わったという事。
心にポッカリ穴が開くとはこの事か。
何度も何度も心を傷ついてきた。
穴ボコだらけになりながらも必死で生きた。
そんな中、その穴を埋めてくれたのが和也だった。
もう穴を埋めてくれる人はいない。
つぎはぎだらけの心に残ったのは、汚い縫い目のみ。
涙が頬を伝う。
もう帰らないといけない。
こんな顔していたら麻央が心配する。
でも……
私も麻央を裏切ってきたんだ。
かけがいのないこの世で一番愛しい存在のはずなのに、心が歪んだ母親は一時の偽りの愛に身を投じてしまった。
偽り?
そうか…。
偽りだったんだよな……
ベッドで愛を語り、のぼせ上がったところで、結局、別れを告げられれば簡単に離れてしまう程度のものだったのだから。