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炎の薔薇
第12章 悪女の勝算
取り敢えず、目の前の大女に会釈をしてみた。
「ここじゃなんですから、少し歩いて移動しませんか?」
村雨美代子は言った。
「お任せします」と私は答えた。
「では……参りましょうか?」
距離を保ちながら彼女と並んで歩いた。
にぎやかなアメ横の通りを抜ける。
名物のチョコレート売りのタワーが重なった景色を横目に通り過ぎる。
この大女と仲良くアメ横で晩御飯の買い出しだとかランチタイムをご一緒するなんて事は、天変地異が起こっても有り得ない話だ。
賑わいのある通りを抜けた場所にあるカラオケボックスの前まで来ると、大女は「ここでいいかしら?」と私に聞いてきた。
『年代も一緒だから懐かしの昭和ソングで盛り上がっちゃう?』なんて口が裂けても言わないだろう。
勿論カラオケをする為に入るわけじゃない。
「はい」と短く返事をして一緒に中へと入った。
フロントで村雨美代子が二時間の利用で受付を済ませた。
『あっ、そっか!』
人前で話せる話じゃないものね。
修羅場になるなら人目を避けたいってわけね。
なかなか頭いいじゃないの。村雨美代子さん。