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炎の薔薇
第12章 悪女の勝算

 落ち着いたとは言えない重苦しい雰囲気の中で、私はアイスティーを一口飲んだ。

 暫しの沈黙の後、村雨美代子が最初の一言を発した。

「うちの主人とはどう出会ったのかしら?」

『うちのエリート亭主と、あんたみたいなただの仕出し弁当屋の事務員じゃ釣り合いが取れないから聞いてるのよ』とでも言いたげで、人を小馬鹿にした口調と蔑む目つきをした。

「ネットです。大人の既婚者が集う部屋のチャットです」

 質問には正直に答えようと思った。

「そうですか。貴女と夫との接点がいまいち分からなかったから」

「ご主人には聞かないんですか?」

「ええ。あの人はただ謝るだけよ。問い質すと土下座までするの。
馬鹿な事をするからよね。全く惨めで情けない話だわ。
貴女も主人とはちゃんと別れてくれたのよね?」

「別れましたよ。奥さんの言う通り。他に何か?」

 人を呼び出しておいて、わざわざ別れた確認か?

「貴女は自分が何をしたのかお分かりですか?」
 
 おっ!やっと本題に入りますか。
 
「分かってますよ。悪い事をしました。
でも、奥さんには永遠に分からない気持ちだと思います」

「貴女は自分がしてしまった事を最低だとは思わないの?
一体、どこまで図々しい方なのかしら」

 また人を小馬鹿にした口調で聞いてきた。

「奥さん、その最低な事をご主人もしたんですよ?
勿論、私も最低なんですけどね。
ただね、なんでそんな最低な事をご主人がしてしまったのかをちゃんと考えましたか?」

 さぁ、ご自分の狭い視野でよくお考えになって下さい!
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