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炎の薔薇
第12章 悪女の勝算
「これで気が済みました?」
バッグからハンカチを出し、顔にかかったコーヒーを拭く。
村雨美代子に対してはあくまでも冷静な態度で挑んだ。
「済むわけないでしょ!!
貴女の人生もめちゃくちゃにしてやりたいわよ!!」
それがあんたの本音ですか?
「奥さん、そんなにご主人を愛してましたっけ?
ただ単に不倫したご主人が許せない、ご自分のプライドの問題ではないんですか?
なんとなく、奥さんに対して反省出来ないんですよ。
本当に申し訳ない事をした自覚はあるのに、奥さんを見ていると謝罪の気持ちが湧かないんです。
こういう時だからこそ、私も本音を話すべきだと思いますから、言わせて頂きますが……
愛着がなくなって、大事に出来なくなって、可愛がれなくなって、飽きてしまった玩具を捨てたはずなのに、ある日、捨てたはずの玩具を大事にしている人を見て、嫉妬心から『その玩具は私のものよ。返して!』と言う子供みたいに見えてしまうんですよね。
返して貰っても、それだけに満足してしまって、結局、可愛がりもせずにまた放り投げるような?
そんな感じの人に見えます。
失礼を言っているのは重々承知なんですけどね」
「主人が玩具で私は子供だと貴女は言いたいわけ!?」
「ご主人を玩具なんて言ってませんよ?
例え話です。
最初に言ったように和也さんはものではありません。
心を持った人間です。
玩具ならまだしも、人間には心があります。
粗末に扱えば、心が離れてしまうのは仕方ない事なんじゃないですか!
そんな事は子供でも分かってますよね?」
言ってやった!言ってやった!
ずぅーとあんたに言いたかった事!
和也があんたに言いたくても言えない事!
あーースッキリした!!と満足して、ふと村雨美代子に視線を向けたら泣いているではないか……