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第12章 悪女の勝算

　言い過ぎたか？
ならその涙に免じて、もう少しだけ教えてあげようか……

「和也さんが好きでした。
奥さんには申し訳ないけど、浮気ではなく本気でした。
インターネットのチャットで和也さんと出会いました。
既婚者が集まって、家庭の不満を言い合ったり、癒しを求めたり、時間潰しをしたり、出会いを求めたりを文字で探すんです。
奥様から見たら、低俗な人間のやる事かもしれません。
そもそも家庭がありながら、そんな場所を求めるのはおかしな事ですものね。
そんな中で手軽な出会いを探してセックスする人も居ます。
不倫をする人も居ます。
話を聞いて貰いたいだけの人も居ます。
誰にも言えない悩みを抱えてストレスを解消する人も居ます。
自分じゃない誰かになりすましてそんな場所を求める人も居ます。

　顔も見えないし、本当の事を言う必要もない。
嘘や真実をゴチャゴチャに混ざり合わせた中で、いろんな人間が集まって成立してしまう世界もあるんですよ。

　そんな世界でご主人と出会いました。

　最初はチャットの会話を文字で楽しむだけでした。
既婚者なのにそんなチャットをする人って、居場所がない人や寂しい人が多いんですよ。
確かに遊び目的のズル賢い人も居ますけどね。

　まあ、理性を忘れてのめり込んでしまったら、軽蔑されて非難されても当然ですよね。

　常識がある人なら、私達がした事を許せないんでしょうからね。

　どんな事情があっても、不倫をする人間は最低だって自覚はありますよ。

　だから、私もご主人も最低な人間。

　最もタチの悪い人間なんです。
　
　奥さんは被害者です。
　私は加害者です。

　でも、ご主人も私の夫から見たら加害者なんです。

　私を恨んで訴えたいのなら、そうして頂いて構いません。

　どうぞ、奥様の気の済むようにして下さい。

　ただ、奥様の出方次第では私も夫に全てを打ち明けます。

　私の夫も、あなたの夫を訴える事も出来るということです。

　私だけが悪い訳ではないんですよ。

　あなたのご主人も私の夫に対しては最低な事をしてますし、お互い様なんです」


　だって、本当の事でしょ？
もう金輪際関わり合うのはお互いに辞めましょうよ。