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炎の薔薇
第12章 悪女の勝算
「どうしてうちの夫だったの?」
村雨美代子は私を睨みつけながら聞いてきた。
「人を好きになるのは、理性すらも止められない事だってあるんです。
私が好きになってしまったのは、ご主人が魅力的だったからですよ」
「なにも貴女ならうちの主人じゃなくても他にも居たでしょ?
それとも計算高く、うちの夫にしといて、いざという時の逃げ道に使ったわけ?」
「どう思って頂いても構いませんよ。
ただ人を好きになるのに、計算が出来るほど私は頭が良くありません。
今更逃げようなんて気持ちもありません。
それだけの覚悟でお付き合いしてましたから」
「どういう覚悟よ!」
「私はバレても逃げませんし、自分の罪は認めます。
それだけの事をしました。
言い訳もしません。
その点、和也さんには覚悟がなかっただけですよ。
最終的には私が和也さんに遊ばれたって事ですね」
「貴女をうちの主人が遊んだっていうの?
さっきから言ってる事、相当図々しいわよ!」
「奥様に図々しいと思われても仕方ないですけど、バレてあっさり家庭に帰っていく和也さんも相当図々しいと思いますよ?」
「貴女って悪魔みたいな人ね!!」
「奥様に恨まれても、罵られても、自分の信念は曲げられません。
私を訴えるなり、慰謝料を請求するなり、奥様がしたいようにされたらいい。
ただ先程も申しましたが、うちの夫も妻を寝取られた被害者です。
奥様の出方次第で夫に真実を打ち明けます。
うちの夫も奥さんと同じ事をするかもしれませんね?
万が一、お互いに訴えて泥沼裁判になっても、私は自分の責任は負う覚悟は出来てます。
その事で私が家族を失ったとしても自業自得だと思いますから。
ただね、最初に肉体関係を求めたのは和也さんですよ。
女が身体を許せばどうなるのか想像つきますよね?
それでも最終的には奥様のお望み通り、和也さんは家庭に帰ったじゃないですか。
遊ばれたのは私ですよ。
卑怯なのは裏切り続けた上で、あっさり家庭に帰れる和也さんの方ではないのですか?
探偵を使ってまで取り戻したかったご主人を、今度は首に鎖でもつけて監視したらいかがですか!」