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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
丁度その時、最後のメニューであるデザートの湯葉とザクロのチーズケーキとコーヒーが運ばれてきた。
「今日はお誕生日のお祝いとお聞きしております。こちらは当店からの細やかなお祝いとなります」
そう言って、デザートを運んできた仲居さんは綺麗にラッピングされた小箱を私に渡した。
「有難う御座います」
「いえ、ほんの気持ちばかりのものです」
和也は店に誕生日の祝いの席という事も事前に知らせていた。
仲居さんが部屋を去ると、「良かったな。茜ちゃん」と目の前の和也は微笑んだ。
「ええ。嬉しいわ。歳を取るのはイヤだけど、こうしておめでとうって言われたら、特別な日なんだって思える」
「特別な日を祝ってやりたかったんや。
茜ちゃんを産んでくれたご両親に感謝やな。
こうして今があるんやから」
あなたは自然に言うのね。
生まれてきて辛い、逃げたいと何度も思ったわ。
でもね、こうして頑張って生きてると時にはサプライズもあるものなのね。
たまにはご褒美が欲しいって思っていたよ……
「和也さんのお陰ね」
「大した事してへんよ。
でも、喜ぶ顔は見ていたい。
茜ちゃんはべっぴんさんやからな。
笑った顔は凄く可愛くてドキっとする。
ドキドキなんやで。俺は」