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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
ブゥーブゥーブゥーブゥー………
そのタイミングでバッグの中の携帯が鳴り、私は和也に断りを入れて、電話に出た。
電話は夫の樹生(みきお)からだった。
内容は、親戚に急な不幸があり、これから出掛けなきゃいけないから、娘の麻央を迎えにきて欲しいとの事だった。
今日は同窓会があるから遅くなるという理由で麻央を樹生の実家に預けていた。
百貨店勤務の樹生は、まだまだ就業時間が残っている。
何ともタイミングが悪いというか……
でもこの時に率直に思った事は、この恋は辞めたほうが良いという神のお告げのようにも感じた。
私は事情を和也に話し、家に帰る事にした。
会計を払い、駅まで送ると言う和也。
並んで歩いても、重苦しい雰囲気に包まれる。
「ごめんね。
折角祝ってくれたのに、こんな事になって」
「仕方ないよな。
もう少しゆっくり茜ちゃんと居たかったけど……」
腕時計の針は18時半を指す。
「本当にごめんなさい」
「いいっていいって」
そう言ってくれるあなたの顔をマトモに見れない。
もう一度、ごめんなさいを言ってこれっきりにした方がお互いの為なのかも……そんな考えが過った。