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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
ーー


 こちらこそ有難う!
本当に嬉しい誕生日になったわ。
これでまた現実を頑張れる。




 和也への返信を打ち始め一旦指が止まる。


 私はあの現実に戻って何を頑張るんだ?

 散々頑張ってきたじゃないか!
 
 これ以上何を頑張るんだ?

 自問自答を繰り返したところで、まだまだ終わらぬ借金を抱え、冷めた夫婦生活を送り、麻央だけが生き甲斐の毎日。
それだけじゃ物足りず、何かを求めて心が飢えている。

 久し振りに男の人とデートして、お姫様のような扱いを受けた。
魔法がとけるには余りにも早過ぎる。
シンデレラはガラスの靴を置いてきて王子様が辿る道すじを作れた。
偽りのシンデレラは、このまま思い出として和也の心に残るだけなのか?
和也だって心が飢えているから私を求めたんじゃないのか?
そんな気持ちにさせる互いの伴侶が悪いんじゃないのか?
私達にこれ以上何を我慢させるんだ!

 そっと息を抜き、現実に帰っても笑っていられるように心に魔法を掛けてもいいんじゃないか?

 私達が妻や夫、母や父の顔を上手く作っていける魔法に掛かってしまえばいいんじゃないのか………

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