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炎の薔薇
第1章 偽りのシンデレラ
贅沢すぎるほどのシチュエーションならば、普通はテンションも上がりっぱなしではしゃいでしまうんだろう。
グルメリポーターのように、目の前に運ばれてきた料理に箸を伸ばし、満面の笑みの後、舌に残る味の感想を声に出して語り、この時を満喫し、心の底から楽しんでしまうはずなのに……
ただ、こんな夢のような時間はいつか終わりがくる事もを心の片隅で覚悟しておかなければならなかった。
浮かれて足を突っ込んだら、ズルズルと引きずり込まれて抜けられず、もがいて葛藤を強いられ、苦しむ未来も予想できた。
でも、ほんの一瞬でも幸せだと思ってしまう気持ちにまでは嘘はつけない。
「今年は良い誕生日になったわ。
こんな素敵な場所で祝って頂くのもどれくらいぶりかしら?
有難う」
本当よ
今、私は笑ってる?
嘘のない笑顔で
そうか……
心が苦しくなるのは嘘をつくからなんだね?
嘘は嫌いなはずだった。