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炎の薔薇
第2章 デート

「茶化してない。
でもなぜ?なぜ私?」

「……寂しかったんやと思う。
大学で好きな研究をしていて、家を守ってくれる人がいるから更に没頭してもうた。
いつの間にか妻は子供だけが生き甲斐の母親になっていた。
これが普通なんやと思ってたし、不意に湧いてくる不満も表に出さずに家族という空気を守ってきた。

 ある日ふと論文を部屋で書いてたら、無性に誰かと話したくなった。
遊び心でチャットなんかしとったら、茜ちゃんに出会えたわけや。
みんなそれぞれに何か抱えていて本音なんか嘘なんか分からんけど、何気ない会話で盛り上がって楽しいと思ったんよ。
堅苦しい話やなくて、今日はこんな事があったとか、子供のスポーツクラブのコーチがもろタイプでキュンとした、同窓会で10年ぶりに会った元カノが子供三人産んでいてかなり太って面影がなくなっていたけど幸せそうでなによりだったなんて非日常的な会話におもろいと感じたんやな。

 非日常的な世界に自分を置く事で息抜きしとった。
顔が見えないから、文字で好きな事を喋る。
でも、文字から伝わる寂しさや不満を垣間見る事もあった。
文字から人間性も伝わる。
いつの間にかそんな世界にはまってしまった」


「中々本音は話せなくても、誰かと気ままに話せる場所は必要よね」

 
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