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滲む墨痕
第4章 一日千秋

 起筆は力強く打ち込む。横画は細く、縦画は太く、そして縦画の左は細く、右は太くなるよう意識する。横画の収筆は筆の弾力を活かし、起筆のときより強い筆圧で右斜め下に押し込む。左払いは鋭く、右払いは太く堂々と……。

 顔法には、向勢のほかに蚕頭燕尾(さんとうえんび)といわれる特徴がある。起筆が丸く蚕の頭のようで、右払いの収筆が燕の尾のように二つに分かれていることからそう呼ばれる。
 この起筆には、蔵鋒(ぞうほう)という用筆法が使われている。横画では右から左、縦画では下から上、と穂先を逆方向に入れてからもとの方向に戻し、穂先を線の内側に隠すように送筆する技法だ。穂先の形が表れずに丸味を帯び、沈潜した重厚な印象を与える。

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