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滲む墨痕
第4章 一日千秋
“明日、東京へ行きます”
目に飛び込んできた文字列に、潤は深く息を吐き出した。
短いメッセージの中には、最寄り駅を13時35分に出発する電車に乗ると示されている。おそらく途中の駅で新幹線に乗り換えるのだろう。
一緒に行きましょう、とは書かれていない。しかし、出発時刻を知らせてきたところになにかしらの意図は感じる。
この瞬間を待ち望んでいた。メッセージをひらく瞬間、自身の置かれた環境をすべて忘れて藤田だけを想い、焦燥感にまみれ、あの夜の続きを想像せずにはいられなくなった。そんな瞬間を味わえただけで充分だ、と心に言い聞かせる。
潤は返信欄に、“私は行けません”と入力した。送信せず、その一言をぼんやりと眺める。行けるはずがない。行けるはずがないのだ。