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滲む墨痕
第4章 一日千秋
彼もきっと同じ欲望に囚われている。その確信めいた推測は唐突に身体の芯を突き、ひそかに収縮させ、奥に潤いをもたらす。潤は、正座の脚をもじもじと動かしながら抵抗を口にする。
「でも、逢えないです……」
すると甘い囁きが返された。
『なら想像してください』
「え?」
『僕の姿を想像して。僕もあなたを想像します』
「……は、はい」
まぶたを下ろすと、ぼんやりと浮かび上がるその顔。現れたのはなぜか最初に見たときの髭面だった。
「昭俊さん。髭は……」
『髭? ああ、ちゃんと剃っていますよ』
笑いまじりに返され、潤も口元を綻ばせながら、想像の中で笑みを浮かべる精悍な顔から髭のみを排除した。