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滲む墨痕
第4章 一日千秋

『潤さん。今日の服装は』

 今度は藤田から質問され、少々戸惑いながら自身の格好を見下ろす。

「黒いセーターに、ジーンズ……」
『ふむ。体験レッスンに来てくれたときの服装と似ているのかな』

 そう言われ、潤はまさにその日と同じコーディネートをしていることに気づいた。この地に来てからは私服で着飾る必要のない日々を過ごしてきたし、近頃は特に書道ばかりなのですっかり気を抜いていた。

「やだ、恥ずかしいです」
『どうして』
「だって、いつも同じような服装……」
『そのほうが僕は想像しやすい』
「……じ、じゃあ昭俊さんは」
『今日は僕も黒の作務衣ですよ』

 引き締まった黒――きっとよく似合うのだろうと思いながら、広い肩を覆う濃い色を思い浮かべる。

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