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滲む墨痕
第4章 一日千秋
藤田からの問いは続く。
『今はどちらで書道を?』
「自宅です」
『机の前に正座して、それともテーブルで椅子に座って』
「こたつに入って、正座しています」
『いいですね、こたつ。暖かそうだ』
「はい。背中は少し寒いですが」
『ふふ、そうですか。では、楽な姿勢に座りなおしてください』
「え、あ、はい……」
言われたとおり、潤は膝を崩して横座りになった。部屋に一人きりだというのに、藤田の視線がすぐ近くにあるかのように錯覚してしまう。
「楽にしました」
緊張しながら知らせると、「うん」と愉しげな返事のあとに優しい声が続いた。
『僕が後ろから抱きしめてあげましょう。そうすれば背中もあたたかい』