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滲む墨痕
第4章 一日千秋
「ああ……腹立つなあ」
低く重い声で吐き捨てた誠二郎は、潤の股から膝を引くと、代わりにそこに筆を近づけた。
「やっ、なに……っ」
潤がとっさに脚を閉じると、内ももにさらりと濡れ毛がかすめる。筆を挟んで肌を密着させれば、そこも墨にまみれてしまうだろう。わずかに脚をひらいたまま静止するしかなかった。
「誰にも見せられないように、この奥も黒く塗っておこうか」
意地悪く囁いた誠二郎が、脚の付け根から内側に下りるきわどい線に穂先を走らせる。
「もっと脚ひらかないと塗れないだろう」
「……っ、や……」
どうすることもできない絶望感を前に、潤の中にあった抵抗の意志がしぼんでゆく。このやりとりを藤田に聞かれているかもしれないと思うと喉が萎縮し、声を出すこともままならない。弱気になると、とたんに視界が滲んだ。