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滲む墨痕
第4章 一日千秋
「そうやって俺の前ではおとなしい女のふりして、外では……っ、だらしなく股ひらいてるんだろ」
非難の言葉を次々に降らせながら、恥丘に茂みの上から筆をぐいと押し込んでくる。彼はもう、穏やかな夫という役目を完全に放棄しているようだ。
「ひっ……や、あ……」
素肌に達する湿った筆の感触。ず、ず、と押し下げられるそれが陰部に隠された肉芽にかすかな振動を与える。蹂躙(じゅうりん)されてゆく。このままでは、黒々と光るその筆にすべてを覆い尽くされる。全身が拒絶反応を示して震え上がった。
「いやあっ! もうやめて……っ、やめてぇっ……」
「うるさい!」
誠二郎は叫び、股から抜いた筆を思いきり振り上げた。怒りか、その手が震えている。だが彼はそれを潤に向かって振り下ろすことなく、邪魔者を振り払うように横へと放り投げた。土壁に激しく叩きつけられたそれは、畳の上にぱたりと落ちて動かなくなった。