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滲む墨痕
第4章 一日千秋
上体を引いた誠二郎は、法被とスーツの上着を一気に脱ぎ捨てながら鋭い視線を送ってくる。その目には憎悪すら見え隠れする。
潤はこれから行われることを確信し、戦慄した。しかし、逃げようとすれば次はなにをされるかわからない。今はただ身体を丸め、怯えることしかできない。
誠二郎は切迫した様子でネクタイを緩め、荒々しく首から引き抜くと、潤の両手首を掴んでそれを巻きつけた。
「……っ、や、あ……っ」
まともに声をあげる間もなく、細い手首はネイビーのシルク生地にきつく締め上げられた。
「親父はもうすぐ死ぬんだぞ。俺たちがこんなことで喧嘩している場合じゃないんだ。早く、跡取りを……わかるよな、潤」
なにかに取り憑かれたようにそう口にした誠二郎は、ベルトに片手をかけながら他方の手で潤の脚を掴んだ。