この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
滲む墨痕
第4章 一日千秋

 誠二郎はとっさに身を引こうとしたが、ふと、鼻先が押しつけられている襟元から懐かしい匂いがした。思わず目を閉じ、香りの深みを追い求めて鼻から空気を吸う。
 汗をかけば、もっと濃厚になる――十代の頃の甘やかな記憶が一瞬だけ甦り、雲散霧消した。もうあの頃とは違うのだ。低く呻き、誠二郎は美代子の腕を振りほどいた。

「妻がいるんだ……俺にはもう」

 自分に言い聞かせるように呟いて立ち上がると、無言で腕を掴まれた。

「着替えないと。出ていってくれますか」

 顔を見ずに厳しく言い放ったが、視線は痛いほど感じる。腕を撫で下ろされ、手を握られた。厚みのない柔らかな女の手は、ぬくもりの中に混じるわずかな色情を伝えてくる。
 耐えられず強引に引き抜こうとすると、予想に反して美代子は簡単に手を離した。かと思えば、彼女はすっと立ち上がりこちらに背を向け、台所のほうに歩いていった。

/335ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ