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滲む墨痕
第5章 尤雲殢雨
「ずいぶんと小さく収まっていますね」
優しい声を投げられ、潤は膝を抱える腕に力を込めた。
「昭俊さんが大きいから」
「はは、そうか、ごめん」
「……謝ってばかり」
初めて会った日にも思ったのだ。よく謝る人だな、と。もしかしてあのときからなにか後ろめたいことがあったのでは、と反射的に勘ぐってしまう。
「やっぱりわざと私に近づいたんですか。……誰かと結託して」
不穏な空気が声に表れないよう極力淡々と尋ねる。
「いいえ」
しっかりとした否定の声がすぐに返された。
安堵と疑心の狭間で揺れていると、丸めた背中を不意に撫で下ろされて飛び上がった。
腰に下りた手が横腹を這い、太ももと下腹の間に滑り込む。拒む暇もなく後ろに引き寄せられ水中でふわりと浮いた身体は、彼のひらいた両脚の間にすっぽりと収まった。