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滲む墨痕
第2章 顔筋柳骨
掛け布団をめくり、愚かで愛おしい妻を誘う。
「潤。こっちに来て」
「え……」
「早くおいで」
「でも」
「いいから早く」
自分の中にある焦燥に急かされるまま強い口調で言い、真意を探るような目をよこす潤に少々苛立ちを覚えながら、のそのそと歩み寄ってきた彼女の腕を引いて布団の中に招き入れる。さわやかなシャンプーの香りが鼻を掠めた。
風呂上がりの火照った身体が冷えてしまわないよう、抱き寄せて布団ですっぽりと覆ってやると、腕の中で潤が気まずそうに目をそらした。
「明日は宴会のお客様が入っているのよね。忙しくなるんでしょう?」
「だから今のうちに癒して」
言うが早いか、パジャマの上から小ぶりなふくらみをまさぐると、潤がわずかに身を引いた。その行動が誠二郎をますます苛立たせた。