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官能書道/筆おろし
第3章 双鉤
 しばらくして、涼子が静かに声をかけてくる。

「あんなことをして、恥ずかしくないの?」

「いえ……恥ずかしいです」

「だったら、もう二度としないって約束して」

 その口ぶりに一縷の望みを感じて、澄夫は上目遣いにちらっと師の顔をうかがった。
 涼子は責めるようなきびしい眼でじっと澄夫を見つめていた。

 あわてて眼を伏せる。
 冷や汗が、じっとりとした脂汗にかわる。
 きつい声がした。

「こっちをちゃんと見なさい」

「……はい」

 澄夫は奥歯を噛みしめて、なんとか眼を上げた。
 膝の上の両手が震える。

 涼子の真っ直ぐな視線を受けるのに全身の力が必要だった。

「きちんと約束して」

「あの……すみませんでした。
 二度と先生の信頼を裏切るようなことはしません」

 涼子の眼を見ながら、なんとか言うことができた。

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