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官能書道/筆おろし
第3章 双鉤
(ぼくは何を言っているんだ)

 妄想の中でさんざん涼子を淫らな女にしておきながら、現実の涼子はあくまで清楚に毅然としていて欲しかった。
 年下の若者を誘惑するようなふしだらな女性であって欲しくなかった。

 自分勝手だとは思う。
 でも、涼子から幻滅だけは感じたくなかった。

 それに、涼子は最近、IT企業の若き実業家と婚約したばかりだった。
 澄夫も何度かあったことのある石黒隆紀《いしぐろたかのり》は、優しく知的な顔立ちの青年で、涼子とはお似合いのカップルである。

「先生には婚約者の石黒さんが……」

「こんなとするわたしは、嫌い?
  幻滅した?」

 涼子は軽く小首をかしげた。
 口元にはほのかな笑みが浮かんだままだ。

 澄夫ははげしく首を振る。

「先生を嫌いになるなんてできません。
 でも……」

「でも、なあに?」

「びっくりして……」

「馬鹿ね」

 唇をとがらせて、布ごしに若い肉棒の先端にチュッと小鳥のような口づけをした。

「でも、かわいい」
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