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官能書道/筆おろし
第1章 長鋒
「もう、いやな子ね。
 澄夫くん、いつからそこにいたの?」

 無心に作業しているところを見られて、照れくさそうだ。
 それでも、その口調は姉が弟に対するような、優しさにあふれたものだった。

 澄夫は覗き見を見つかった子供のようにあわてた。

「いや、あの……
 先生があんまり愉しそうに筆をおろされているものですから、声を掛けづらくて」

 そう言いながら、半分開いた襖の陰にそそくさと下半身を隠す。
 顔だけ覗かせて、

「今日の課題作品を教室に展示しておきました。
 あと何もなければ、ぼくもちょっと練習をしておきたいんですけど」

「ありがとう。それだけで大丈夫よ」

 澄夫が部屋を去ろうとすると、後ろから涼子が呼び止めた。

「あ、ちょっと待って」

 戸惑いの表情で澄夫はその場に固まった。

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