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愛里 ~義父と暮らす小学六年生~
第4章 花火大会。ホテルのバルコニーで
 いくらセックスを警戒していても、愛里はまだ少女だ。本来ならこの祭りの雰囲気にテンションが上がる年齢だ。
 愛里もあちこちの屋台を見て回るにつれ、セックスへの警戒を忘れてしまった。小さな心は楽しむことでいっぱいになってしまった。

 幸彦と分け合って少しずつ食べ歩きをして、まだ温かいミニカステラをホテルで食べる用に買った。混雑する前に早めに、と入ったお店の天ぷらは美味しかった。

 お母さんにも食べさせてあげたかったな。

 たくさん撮った写真を見ながら愛里はそう思う。

 家に帰ったら、写真を見せながらいっぱい話をしてあげよう。ちゃんと揚げたての大きな海老の天ぷらも写真に撮っていた。

 食事を終えてホテルの部屋に戻った。愛里達の部屋は最上階だ。多くの人で賑わう本堂がよく見える。

「すごい人だね」
「うん。早めに戻ってきてよかったね」

 愛里に答えながら幸彦がテレビを点けた。チャンネルを変えると、今まさに愛里達が歩いて来た参道や打ち上げ会場の川の周辺等が映っていた。

 この花火大会は毎年テレビ中継されている。

「あ、愛里ちゃん、このホテル」
「え?」

 慌てて愛里が振り向くと、確かに遠目ではあるが愛里達が泊っているホテルの外観が見えた。

「外に向かって手を振ったらお母さんに見えるかな」
「見えるかもね」

 うん、と頷くと愛里はバルコニーに出て大きく手を振った。本当は「お母さん」と大声で呼びたかったけど、さすがにそれは我慢した。

 遠くにヘリコプターが飛んでいる。

 あれが撮ってたのかな。空の上から花火見たら綺麗だろうな。

 少女らしい無邪気な考えは、愛里の心をウキウキさせた。

「映ってた?」
「ん~、小さすぎてよく見えなかったけど、愛里ちゃんかもって人は見えたよ」
「本当?」

 テレビに映っちゃったかも。ちょっと嬉しい。

「お母さん、録画してくれてるかな」
「かもね。帰ったら見てみようね」

 うん。ミニカステラを頬張りながら愛里が笑う。

 その時背後でどーん、と大きな音が聞こえた。大きな歓声がバルコニーの下から聞こえてくる。
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