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愛里 ~義父と暮らす小学六年生~
第5章 教室での『はじめて』
「やだ、やめて…絶対やだ…!」
「どうしたの? いっつもみたいにさせてくれればいいんだよ」
「ここ、学校だよ…絶対無理」

 今は教室には二人っきりとはいえ職員室は先生がいる。もしかしたら隣の教室も自分達と同じように使っている人がいるかもしれない。
 愛里の机は窓側。胸をまさぐる腕から逃れようと体をよじるとこつん、と頭が窓にぶつかった。外にはサッカーの練習に集まっている学校の友人達の姿が見えた。

 絶対に絶対に、ここでされるのはいや。

 愛里は強くそう思っていた。

 学校は幸彦が入って来れない唯一の場所だった。ここにいる間は犯される心配をしなくてもよかった。

 もし今日、ここでされてしまったら…

 きっと幸彦は味をしめる。ここでも出来るじゃないかと、そう思うだろう。
 そうなったら、何かと理由を付けて学校にまた来るかもしれない。そこで犯されるかもしれない。

 学校は子供たちの国だ。先生という大人はいるが子供が中心の、子供のための場所だ。

 愛里にとって、最後の守るべき場所。それが学校だった。

 それと理由がもうひとつ。愛里が窓の外に一瞬目を向ける。

 校庭でボールを追う男子の一人に焦点が合う。楽しそうにボールを追う少年。
 
 愛里の片思いの相手だった。

 少女らしい甘いファーストキスを夢見ていた。まだ知識も経験もないながらも、裸で抱き合う想像もした。

 そういう相手だった。

 ファーストキスも初体験も、甘い夢は幸彦に無残に打ち砕かれたが、まだ想いは寄せていた。伝えることは出来ていないが、向こうも時々自分を気にしてくれているような、そんな空気を感じることがある。

 もし、勇気を出して告白したら上手くいっていたかもしれない。いや、今だってそうしたいという気持ちはある。

 そんな相手がすぐ近くにいる。そこで犯されるのは絶対に嫌だ。
 だからこの日の愛里は今まで以上に必死に抵抗した。
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