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姦譎の華
第16章 16
 肉棒を慰めるためのたづきにバストを使われて、女という存在の何たるかを思い知ったのだ。それどころか、男らしく猛々しい剛直に撫ぜられたことで、不遜の仮面の下に潜んでいたイヤラしい願望が、覚醒してしまったのではないだろうか。

 この俺の、色責めによって──

 早足でこちらに向かってくる足音に、島尾は溶けかかっていた顔を上げた。待ち人がやってきたというのに、小さく舌打ちをする。凭れていた壁から身を離す一連の動作の中で、来たる野郎に気づかれないよう、新たな先走りでヌメつくズボンの前を撫でてポジションを整えた。

「すっ、すみません……」

 検証データの突合がなかなか終わらず、終業後もしばらくかかってしまった稲田は、他の社員の目がなければ全速力で駆けて来たいくらいだった。最後に流したバッチ処理が正しいのか、せめて途中の出力を確認してから席を立つべきだったのだが、仕込んでいる間に島尾がフロアを出ていくのを見てしまっては、悠長なことはしていられなかった。

「けっ、んな慌てなくてもいいだろ」
「ええ、まあ……」

 おそらく、明日見たらどこかでエラー停止している。今日の作業の精度を鑑みても、妙な自信があった。ごく簡単な正規表現ですら、何度も間違えた。間違えて抽出したデータに対し間違えた変換をかけているのだから、値は何度やっても整合しなかった。どこをどう間違えたのだろうとヒストリを見直せば、そこからやりなおすこともできたのだろうが、

「てか稲ちゃん、今日何回ここに来たんだよ?」

 間違えるたび、倉庫へと向かった。

 ストッキングのサラリとした感触波打つ土踏まずや、潰れるどころかヒビひとつない爪を並べる趾に肉槌をくぐらせ、発射ギリギリのところまで精悦を味わった。そして席へと戻り、また間違えた。凡ミスの多さに、倉庫へと行きたいあまりわざとやらかしているではないかと、我ながら呆れたほどだ。

「……さ、三回くらい、ですかね……」

 詳しくは憶えていないが、少なくとも間違えたのはそんな回数ではないだろう。
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