第6回 官能小説コンテスト 受賞作品
- 大賞
該当者なし
- 特別審査員賞溺愛 ~ どうか 夢のままで ~作者 弓月 舞不倫・禁断の恋優しくて自慢の兄──。お兄ちゃんがわたしに向ける愛は、いつからか…どこかがオカシイ。
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小林弘利先生
ヒロインのかまととぶりや頭が弱いとさえ思える世間知らずぶりは都合の良い物語のために存在しているかのようだし、伊月も不破も対象的なイケメンという以上の人物造形がなされておらず、伊月の彼女や不破の不良仲間も物語の展開に与えられた役割以上のものとして描かれてはいません。また、三人を囲む世界観にリアルさも足りていないように感じます。そういったマイナスがありつつも最後まで《秘密》を保させながら読ませていくことの出来る作品でした。官能場面でも行為そのものよりも、男なり女なりの心の動きに注目した描き方になっていることに好感を持ちました。
後半のひねりが多少とってつけた印象がありつつも、狂った関係の哀しさが伝わる表現だったように思います。大泉りか先生
今回のノミネート作品の中では、ストーリーのオリジナリティが、一番高かったと思います。オチでは、まんまと驚かされました。陰鬱な作品で、読み手を選ぶとは思いますが、こういった陰のストーリーを好む読者も多いと思うので、届くべき人に届いてほしい作品です。内藤みか先生
官能表現に卓越したものがあり、高く評価できる作品です。擬音一つとっても大変凝っていて、将来がとても楽しみです。とはいえ兄妹、それからクスリというダブル禁断は、読む人が限られてしまいかねず、それはとてももったいないことです。また、クスリを持ち出すとなんでもありになってしまうので、ラストはしっかりお互いの意思を確認しあった上での絡みがあったほうが読者は安心できるのではないでしょうか。
- 優秀賞フリマアプリの恋人作者 雪 碧子恋愛・純愛僕は君を探している。…まだ見ぬ君を…この小さな画面の中から…
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小林弘利先生
ようやく小説という形になっているものを読めたという印象。いきなり性愛描写からはじまるような作品が多いなか、ちゃんと人物や世界観の提示がなされ、人の行動や心の動きに合わせて、徐々に官能場面へと筆が進んで行く。そのジラす感じが好ましいと感じました。けれどその官能場面は、というと、やはり、美しい女性を相手にお互いに求め合うスタイルの行為として描かれ、背徳やモラルの崩壊や日常が呑み込まれて行くようなスリリングさ、《ヤバさ》、そして読者を興奮させるような《エロさ》は薄く、ジラしたわりには淡白、という気がします。主人公たち以外の幼馴染や、大学の生徒や義理の母たちの描かれ方がとても良くて、小説としてのクオリティを感じます。義理の母が主人公を思って自分を慰めるような場面や幼馴染がヒロインを思いながら他の女を抱くような、そういう描き方がなされるのが、官能小説だろう、とも思いますし、ヒロインが性愛に溺れて行く様子も、もっと克明に描写されるべきだろう、とも思い、その点がマイナス・ポイントとなっています。大泉りか先生
文章能力がとても高く、「上手だなぁ」と思いながら読みました。キャラもしっかり立っていますし、ストーリー構成も、テッパンではあるものの、自然な展開です。しかし官能小説というのならば、ヒロインの濡れ場が少ないのが物足りなく、また美しい義母や妹の濡れ場も描いて欲しいところです。内藤みか先生
キャラクターづくりが評価できる作品ですし、タイトルも秀逸です。けれど逆にそのキャラ力の高さが裏目に出てしまったところがとても残念。せっかく冒頭で生き生きと義理の母と義理の妹を出したのに、まったく色恋的な絡みにならなかったのです。読者はこの二人の女性を好ましく感じ、この2人もいやらしいことになっちゃうんだろうなと期待を膨らませてしまうのですから、大変もったいない話です。官能小説ならば、絡みのない女性を冒頭に出すべきではなかったのです。
- 優秀賞キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】作者 成巳京恋愛・純愛この世界の中で、キミだけを見つめる。
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小林弘利先生
エッチなシーンもあるラノベという感じで、平凡な男に美女がふたり、向うから好意を寄せてくる、という最近よく見かける「都合がいい妄想」の域を出ていないラブアフェアに新味がない。だが、文章や物語の展開はそれなりに「謎」を引っ張る運びになっていて、物語の先を読ませる力がある。
女性のほうから接極的にアプローチしてくる、という安易な作劇テンプレが惜しい。官能小説としては「官能」がただ「気持ちいい」とか「快感」としか扱われていないので浅い印象しか持てない。大泉りか先生
個人的にとても好きな作品でした。ヒロインと主人公の距離が近づいていく過程が自然で、性的な発展も無理がない。また、ヒロインがただ受け身なのではなく、きちんと性欲のある女性として描かれているのも好感を持ちました。男女両方の目線で描かれているのも、読みやすくてよかったです。内藤みか先生
全般的にまとまっているお話でした。ただ、上手にまとまりすぎてしまったがために、この作品の個性が見えづらくなってしまったのが気がかりです。浪人してコンビニで働き出すことも、そのコンビニに美少女がやってくることも、少年マンガや美少女ゲームなどで、たくさん出てくるシチュエーションです。それだけに作品のオリジナリティが必要で、他とはこういうところが違うのだという部分を、もっと色濃く出していただきたかったと思います。
- 優秀賞淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~作者 新川紗生痴漢・痴女とある深夜の電車内での痴漢をきっかけとして淫靡な世界に堕ちて行く恵子
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小林弘利先生
一人称で綴られる日記風の小説。痴漢を求めて電車に乗る女、という設定に目新しさはあるものの、どのように触られたかを描写するだけで、それがただ繰り返されるだけだった。そこには公共の場で快楽に溺れる背徳感や羞恥が語られても良いシチュエーションなのに、恵子が感じるはずの他者の目、というものがまるで描写されず、そこが私室であっても心情に目立った違いはないように思える。また「見られていることで興奮する」というような側面にも触れられていない。
これではblogのような文章であっても小説とは言えないのではないか。そこに主人公の心の内側を語ろう、描こう、みつめよう、という作者の意思が感じられない。大泉りか先生
痴漢男性たちの生態や、専門用語などが興味深く、とても面白く読みました。受け身ではなく、自分の性癖と対峙して実現するヒロインのキャラクターも魅力的で、個人的にとても好感を持ちましたが、その<性癖>の形が、いまいちわかりにくかったのが残念です。描写力がとても高く、臨場感たっぷりなところも魅力でしたが、少し多弁すぎて読みにくい部分も。抑える部分は抑え、濡れ場などは引き続きこってりとメリハリをつけると、さらに読みやすくなると思います。内藤みか先生
全編にエロスが漂うとても素敵な作品。ラストにも百合的要素が盛り込まれ、大団円となっていて華々しいです。ただタイトルが「日記」とありますが、日記風ではないため他の案も考えたほうがいいかもしれません。また、変態さんたちが大勢登場し楽しかったのですが、彼らが何故そうなったかの描写がないと展開に唐突感が出てしまいます。こうした理由でこのようなことを欲するようになり、それゆえこのように苦しんでいるなどの書き込みがそれぞれのキャラクターにあれば、高い順位も期待できます。
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