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姦譎の華
第24章 24
 オーラ?

 物の譬えにしか使われないと思っていた威圧感を、生まれて初めて肌で感じた。自分が歳をとっていく延長線上には立ってはいない、隔絶した高みから誇らしげに見下ろされている気分。

 あんな思いを味わせておいて──

「藤枝さん、い、いつまで、このままにしとくんですか?」

 生唾を絡ませる稲田に言われてやっと、愛紗実は指に挟んでいた煙草が灰になっていることに気づいた。手首のカルティエを見ると、縛り付けてから一時間以上が経過している。

 吸い殻を捨てた指の節がムズムズとした。持ち手にタオルを巻きつけ、細心の注意を払って取り扱ったにもかかわらず、いくらか水滴が付着してしまったようだ。ずっと傍らに控えている二人は、時おり音を立てて手指を掻いている。張形を絶えずチェックして、奥まで押し返す役目を忠実にこなしているためだ。これほどの掻痒を生む物を体の真ん中に埋ずめられていたらと考えると、同じ器官を持っているだけに、組んだ脚の奥がゾッと騒めく。

 なのに……、常人ならば狂乱してしかるべき煩悶に苛まれているだろうに、女は死に物狂いで戒解を請うことも、淫らな場所を弄ってほしいと願い出ることもなかった。絢麗に開いた肉体を、ただひたすらに見せつけている。

(……くそっ)

 甲につけられた傷が痛んだ。もし喫煙が習慣化してしまったら、この女のせいだ。

「んじゃ、ちょっと二人で可愛がってあげて。こんだけ焦らしてあげたら、あんたらのヘタクソな愛撫でだって悦んでくれるでしょ」

 許しを出すと、二人が一斉に女を貪りにかかった。添い寝をし、髪や肩、脇腹や脚を撫でて慈しむ……「愛撫」という言葉を聞いてもそんな発想は一切浮かばなかったらしく、島尾は真っ先にバストへ飛びつき、稲田はせかせかとベッドを降りて足先へと向かった。

 肥えた体のせいでよく見えないが、島尾は寄せ上げた吸い口へ、がむしゃらにむしゃぶりついている。口が一つしかないのを恨むかのように、忙しなく頭を左右に動かしている。ときどき谷間に向けて身を屈めているのは、乳房で顔を挟んでいるらしい。そんなことをして何が嬉しいのかわからないが、恍惚とした哭き声をあげ、思い出したかのように再び先端をしゃぶっている。
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