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第34章 34

　蹲っていた稲田を飛び起こさせ、前のスペースへと誘い寄せた。しかし膝立ちでは、股間の位置が低すぎだった。島尾もずっと頭を浮かせていられるだけの持続力なんてないだろう。手足が長いことが仇になることもあるんだな、と自嘲しつつ、膝と手のひらそれぞれの間隔を大きく、ベッドいっぱいに届かせんばかりに伸ばして低い体勢となった。

「エ……」

　首を反らし、顔を見せつけながら幹の裏側を慈しむ。たたらを踏むために揺れる槌先をアヒルにした唇でとらえ、唇、舌だけではなく鼻先、頬、眉や瞼までをも使って、肉幹の至るところを撫でてやった。稲田は両手で己の頭を掻き毟りながら、餌を落とされた鯉のようになっている。

「ンムッ……！」

　唐突に、種実が吸われた。

　顔面近くまで降下していた牝花を両手で開いておきながら、島尾はしばらくふるいついてはこなかった。訝しみつつもしたいようにさせていたのは、綿密に牝の構造を査閲しようという視線が、釈迦力に舐め回されるよりずっと鮮やかに奥を慄かせていたからだった。そしてついに施された口愛は、プレイルーム以来何度も為されてきたいずれより烈しく蜜汁を迸らせ、期待の遥か上を行く開放感に驚かされた。

　島尾の技巧が長じたからだろうか。あるいは欠片でも、島尾への愛念が芽生えたのだろうか。
　いずれでもなかった。

（……おぐっ！）

　肉槌が喉をくぐってしまいそうなほどの深甚に射し入ってくる。膝を進めてにじり寄った稲田は、 悩乱を逃がすのならば自分の頭皮を毟るよりもずっといいと気づいたか、前屈みになって脇から両手を差し入れ、房づくバストを揉みしだいた。息が危うい。嘔気も凄まじい。しかし頬裏を鰓が擦すると、口腔性交という言葉が腑に落ちるほどの愉悦が沸き起こり、歪められる肉実よって増幅していく。

　稲田の肉槌に、愛着が、あるいは、尊念が湧いたからだろうか。
　もちろん、違う。

（きもちいい……）