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姦譎の華
第11章 11
(……もうさすがに終わりかもしれない)

 部長が定年退職を迎えたら最後の一人になってしまう。システム部は解散だ。仮に存続したとしても、やがて今やっている仕事は、エンジニアを名乗っておきながら仕組みはさっぱりわからないAIがやってくれることになるらしい。自分の定年までは持ちこたえてほしかったが、どうやら難しそうだ。世間では人手不足が叫ばれてはいても、必要とされているのは人材であって人員ではない。

 近年そんな不安を抱え続けていたことが、堕罪への引き金だったのだろうか。もうどうにでもなってしまえ、と──

(うう……)

 稲田はやおら席を立った。部長が渋い顔で睨んできたが、フェイクとして腹を摩すりながらフロアを出てトイレの個室へ駆け込んだ。

 便座へ腰を下ろし、上着のポケットから中身を取り出す。震える手で三つ折りにしていたベージュの布地を開いた。

 夢のようなひとときだった。手の中にある羽衣が何よりの証拠なのに、いまだに現実感が持てない。

 脚を通す輪に指をかけると、薄っすらとした汚目がクロッチに広がっている。中央を横に渡る縫い目へ鼻先を近づけてみたが、聖女の名残はどこにも確認できなかった。それもそのはずだ。乾き染みは、自分が流した涎の痕なのだ。

 島尾が「ヤろう」と言ったとき、やはり、自分は首を縦にも横にも振らなかった。

 禁域をしゃぶり回すことができたわけだし、島尾は島尾で、宿願のバストを味わったのである。もう十分だろう。そう諭さなければならなかった。

 なのにテーブルの上に投げ出された美脚の前に跪いたら、我知らぬうちにショーツへと手が伸びていた。しかも脚の付け根まで引き下げていくと、なんと、聖女はヒップを浮かせて応じてくださったのである。
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