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手紙と初物(柊屋敷ピックアップ御礼兼護衛のサイドストーリー)
第1章 手紙と初物
「や……一回じゃなくてですね……三回ほど……」
「はあ?!素股で三回だぁ?!」
「しーっ!!しーっ、声が大きいっ!!」
「あ、済まねぇ済まねえ。凄ぇな、お前。そんなら、情が移ったろ」
「……へえ……」
「いっそ、そいつを嫁にしちゃどうだ?」

 サクナは軽く提案しました。ローゼルの婚約と初夜と自身の首で落ち込んでいるビスカスが、元気になるならと思ったのです。
 ……ところが。

「へえ……もう、今朝、嫁にして来やした……仮ですけど」
「はぁあああ?!何だよ、その手回しの良さは?!」
「やー、良いもんですねー、嫁って響きゃあ……サクナ様が嫁馬鹿になる気持ちが、よーく分かりやした……」

 ビスカスは、人の顔はこんなに崩れる物なのかと言う位、へにゃへにゃに笑いました。

「そりゃあ目出度ぇな、ビスカス。スグリが帰ってきたら、祝わなきゃなあ」
「ありがとーごぜーやす……いやー……俺がサクナ様んとこ行くって言ったら、一緒に来るって言ったんですが……入んなかったっつっても初めてですし、寝不足でしょうし、心配で……また改めて、ふたりで参りやす」
「あ?ああ。相手は今日休みなのか?」
「休みですよ?ずっと休んでんでしょ」
「……は?」
「あ、でも、見合いが終わって、結婚も……無事に、済みやしたから、また明日からでも働きてーって、言ってやしたけど」
「……お前、誰と結婚したんだ……?」
「へ?お嬢様ですけど」
「っはぁああああああああ?!ローゼルだぁあああ?!」
「へい?そーですよ?」
「従兄弟ぁどうなったんだよ!!ってか、じゃあ……」

 サクナは、素股で三回はローゼルとかよ!!と思いましたが、先程の他言無用の口止めを思い出して、賢明にも口には出しませんでした。

「リアン様は、お嬢様よりご自分が大事だったんでさあ。そんなら、俺のがまだマシだって思いやして、お嬢様も、俺を望んで下すったんで……俺とお嬢様ぁお見送りしてねーんですけど、大奥様のお話と旦那様とタンム様の謝罪でご納得頂いて、お帰り頂く事になったみてーです」
「そんな理由かよ……誰だって普通は自分のが大事だろ」
「……もしサクナ様が、ご自分かスグリ様のどっちかしか助からねーから選べって言われたら、どうします?」
「んなもんスグリだろ。……あ」
「ほらね」
「なるほどな」

 二人の嫁馬鹿は顔を見合って、にやっと笑いました。
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